石角友香。 flumpool、ニュー・アルバム『Real』より「ディスカス」リリック・ムービー公開。スペシャでリモート脱出ゲーム特番放送、小野武正(KEYTALK)、竹中雄大(Novelbright)らゲストも登場

30代こそ履いてほしいドクターマーチン3ホール。スタイリスト・高上未菜が提案するオトナカップル秋冬コーデ

石角友香

12 渋谷CLUB QUATTRO ライブ配信はリアルライブの代替物ではない。 会場は10年前の同日、ソロとして初のワンマンライブを開催した渋谷CLUB QUATTRO。 定刻になり、映し出されたのはQUATTROのエントランスから楽屋への入り口に折れたところで、後ろ姿の星野が映し出される。 ステージに上るアーティスト目線もレアだ。 そこでフルアコースティックギターを手にし、マイクに向かって歌い出したのは「Pop Virus」。 バンドサウンドが鳴り響くとともに、カメラがメンバーのいるフロアを映す。 膨大な数のカメラが普段は見られない演奏者の手元まで捉え、効果的なスイッチングで映像作品としての完成度に期待が膨らむ。 星野源 撮影=西槇太一 最新の楽曲から一転、ソロの超初期の作品「老夫婦」を弾き語りするにあたって、ずっと曲を書き続けていることに驚き、大変さとともにある面白さを語る。 この曲の言葉少ない中にある他者と生きていくことや、日々の積み重ねの中にしかない愛おしさ、つまり人生と言っていいだろうこんな曲を、歌うことを始めたばかりの彼が作っていたこと。 そこに稀有な表現者としての星野源を見た。 そして、世界中にそのムーブメントが広がり、自分自身が最も元気付けられたんじゃないかと語った、「うちで踊ろう」のバンドバージョンを初披露。 ポップなバンドサウンドにアレンジされ、《それぞれの場所で重なり合おう》と歌うこのナンバーは2020年を象徴するとともに、まだまだ不安や矛盾を抱えて生きていく私たちの日常に必要だ。 星野源 撮影=西槇太一 さらっと演奏されるどの曲にもそれなりの重みがあるのだが、無邪気に笑える場面も。 曲間でのお喋りが定番の「プリン」で、自粛期間にどう過ごしていたのかを喋り合うのだが、河村の初孫誕生トークが止まらない。 「かわいくて天使みたいで、この時期に最高のプレゼント」という本心にこちらも感情移入してしまうが、彼が再び演奏をスタートさせる役割なのに再開しなくて大爆笑。 最高のバンドメンバーであり、仲間の姿が、オーディエンスである自分にとっても愛しくてたまらない。 星野のライブでは毎回、爆笑するけれど、この日、久々に心から笑ったようにも思う。 続けて様々なターニングポイントの中でも、自身のギアが変わったと実感した3曲「SUN」、「恋」、「Same Thing」を続けて披露。 「恋」の二胡のフレーズをフルートに置き換えたり、間奏のリフをギター&ベースのユニゾンで盛り上げたり、面白がってアレンジを変えていくメンバーのプレイも一つ一つが見逃せない。 特に「Same Thing」は世界の全世代に届いて欲しいと改めて感じた。 星野源 撮影=西槇太一 抜群のカメラワークでライブドキュメントを見ているような満足感と脱線もアリなトークを交えて、あっという間に2時間が経とうとしている時、星野はこの10年について語る。 「世の中は変わって行って、同じ気持ちでいるのは難しいと思うんですけど、違ったなと思ったら変えていくのがいいと思います。 中学時代は人間関係よくなくて、吐き出すような曲ばかり作ってましたけど、日々音楽をガッツリ聴いて、自分の中にあって表に出せなかった歌っていうのを10年前ここで出して、そのなかでいい人にもよくない人にも出会ったことも大事で。 その中で戦って。 ここだとみんなに直接言えるんで、ありがとう」 それは今まで支えたり、関わってくれた人だけでなく、自分を動かす全てに対してなのだろう。 バンドでのラストナンバーは、まさに《いつかあなたに出会う未来》を希求する「Hello Song」。 8人態勢でもビッグバンド級の迫力とカラフルさを描いたメンバーの力量に感嘆する。 曲中、星野は「いつかまた笑顔で会いましょう! 画面でも別にいいじゃん!」とカメラに向かって言った。 同じ時代に生きていることを実感することの意義がそこにはあった。

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【堀込泰行】キリンジ・マナーから抜けて、言葉を書く気分も変わったかもしれない

石角友香

アーティスト活動10年目を迎えた澤部 渡のソロプロジェクト、スカート。 数多の名曲を送り出してきた彼の新たな一手は、箱根駅伝スペシャルCMとのタイアップ「駆ける」と、ドラマ「絶メシロード」主題歌「標識の影・鉄塔の影」というダブルAサイドシングル。 あらゆるブームの狭間にいると自負するスカートの現在地。 「駆ける」は曲だけ聴いてまさか箱根駅伝のCMとは思わないだろうなという飛距離がありました。 去年出た『トワイライト』の中の「あの娘が暮らす街(まであとどれぐらい)」っていう曲のMVを撮ってくれた方だったんですね。 そんな大袈裟にぐん!と上がる感じじゃないんですけどね。 とにかくそれで1回、そういうのはなし!自分のための新曲を書くぞ!と。 それで頭を動かして、そっちに行こうと思ったんですよね。 歌詞も端的ですし。 「そうですね。 「うんうん。 リフっぽく聴こえるけれど、でもちょっとひねくれてる感じもあって、コードとか進行に。 CM自体が。 「それはうれしいです。 なんかたまにこう、東京とかでも車で走ってて、きれいに舗装されてるところはすごい舗装されてるんだけれども、そうじゃないところもあるじゃないですか。 それでも洗練されてるように聴こえる理由ってなんなんだろう?と思って。 「あ、うれしい。 そうですね……どこなんだろうな?でもAメロはかなり屈指の出来ですね、スカート史上(笑)。 この曲、サビが1回しか出てこないんですよ。 そういう細かい変なことをやったりして。 「うん。 そうそう。 追い詰められてるとまでは言わないんだけど、繰り返しじゃないみたいなね。 そういうものは結構、意識はしたかもしれないです。 そういうドラマというか、CMの内容を見てなのか……自分でも分かりませんけど。 でも結局は冒頭のリフに戻ってくる、みたいなね。 でも終わり方はちょっと違う。 「なるほどね。 そうかも。 珍しいタイトルだなと。 「そうですね。 痩せたアスファルトもイメージできますし、駆けるってことをたぶん、この歌の主人公はしてなかったんだろうし。 「うん、そうかもしれない。 「そうなんですよ。 やっぱりあまり派手な装飾を入れないっていうのは徹底してやってますね。 だからこそいま言ったみたいなピアノの一音が効いてくるみたいなのがね、いいなあと思ったんですよね。 絶対通ってるって思ってましたが。 「そう。 それでいま夢中になって聴いてるんですけど。 なんだっけな?『ヨルダン・カムバック』に入ってる曲で、「All The World Loves Lovers」って曲があって。 「そうなんですよ。 でも二十歳くらいの頃はわかんなかったですね。 しかも「絶メシロード」ってテレ東の十八番じゃないですか。 「標識の影・鉄塔の影」はそれなりに主人公の背景も勘案して書いたんですか? 「そうです。 これは完全にあてがきですね。 あんまり。 でも打ち合わせのときに言われたのが、週末で家に帰るときの感じ……みたいな話だったんで。 そこはドラマの持ってるイメージに寄り添わないと絶対、変にエゴを出したらダメだなと思ったんですね。 変に熱すぎず、冷たすぎず。 そのくらいのものを求められてると思ったんですよ。 「そうそう。 だから「標識の影・鉄塔の影」だけだとたぶんシングルとして切ってなかったと思いますね。 「そうですね。 ところでこれまでの10年の活動の中で、澤部さんが思う大きな出来事やこの作品があるからいまのスカートがあると思う作品は? 「転換点っていう意味だと、やっぱ『エス・オー・エス』を出したっていうのは当たり前に大事ですね。 これは最初500枚作って。 1年経たずに売り切れたんですよ。 こんな名前も知られてない僕の無名のCDを買ってくれるなんて!みたいに思ってて。 最初はやっぱりね、音楽で飯食えるとか思ってなかったから。 しばらくフラフラして様子見て……みたいな、大学卒業して、フラフラして両親には申し訳ないんですけど(笑)。 それでやってみて、その中で「ストーリー」って曲ができてっていうのがやっぱり大きいかな。 「やると気持ちいい曲だし、歌ってても気持ちいい。 「ストーリー」が思いがけず売れたっていうのは大きいですね。 友達同士ではあるんでしょうけど。 「ああ、そうかも。 だからほんといい湯加減でやってますよ。 メンバーそれぞれバンドとしての正妻がいて、それがだんだんみんな止まっていくんですよね。 「そうですね。 先ほどもおっしゃっていたようにサポートメンバーのバンドが活動休止したりしたことを考えると…… 「ま、長かったんだろうな。 「そうなんですよ。 「うん。 ぴったりね。 いま、20代後半のバンドの流れみたいなものには僕らはもう置いて行かれたし。 逆にそれより前のムーブメントとかには自分は属せなかったっていう居心地の悪さもどっかであって。 技術的な意味でも狭間だったしね。 「ほんとツイッターぐらいですよ、恩恵を受けたのは(笑)。 でもツイッターもどんどん居心地が悪くなっていくし。 「まあね、それでいいとは思うんですけどね。 それでなんかいままでCD買って聴いてくれていた人たちがストリーミングに流れていくのは辛いですね。 もう廃盤だとかそういうものを一切気にしない海に飛び込めるのはほんとにいいことだと思いますよ。 「歴史とか情緒がね。 やっぱブックレットでクレジットが見れないのが問題だと思います。 「ははは!なんか自分たちが発信できる何かがサブスクには必要だと思いますね。 セルフ・ライナー・ノーツとかそういうことじゃなくてね。 「そうなんですよ。 「だから選曲も割と座って楽しめる曲……って感じにしようかなと思って。 座りじゃないとできない曲もたくさんあるんで、スカートは(笑)。 「そうですね。 その振れ幅を今年は見せられたらなと思っています」 (おわり) 取材・文/石角友香 写真/桜井有里.

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「心のこわばりを溶かす5曲」(石角友香 選曲)

石角友香

ピアノバラードというには大袈裟な部分は皆無で、生バンドのアンサンブル・メインでありつつ、非常に一音一音が繊細で演奏のタッチやロングトーンに気が配られている。 社会人として大人として気を張って外で過ごし、帰宅した自分に「どうだった? 大丈夫?」と声をかける歌い始めは、まるでリスナーである自分にかけられている感覚に陥るのだ。 サビの<僕らは大切な人から順番に 傷つけてしまっては 後悔を重ねていく>というラインに自己投影できる流れができている。 非常に内省的だ。 ただ俯くだけじゃない。 それは、サビがファルセットで歌われていることによって、静かに後悔に向き合い肯定する心の準備ができるアレンジの力が大きいのではないだろうか。 ラスサビでほんの少し高音に転調することで、力強さを感じ取れるのもさりげない。 TENDRE「hanashi」 都会的、マルチプレーヤー、ニュージャズ以降のアカデミックな素養。 そうした背景も何もかもまるっと飲み込んで、TENDRE=河原太朗が今の時代のシンガーソングライターであることは今や自明だろう。 そしてそれは大袈裟なことじゃないという歌詞は、ちょっとした驚きだった。 その自然で素直な心の動きが、1人で重ねた少し後ろにずれる感じのビートや、フワッと鳴ったり、途切れがちな言葉のようなエレピが言葉以上に雄弁に表現する。 まぁ、現実には誰とでも話せないからこそ滲み入る曲なのだけれども(それは今の状況じゃなくても)。 PAELLAS「Weight」 残念ながら解散してしまったけれど、PAELLASの中でもスムースなソウルを現代的な解釈で消化したこの曲の温かさは、永遠に眠れない夜のお守りであると思う。 選び抜かれた3リズム。 BPMも焦りをなだめるようにすごくゆったりしている。 ボーカルで歌詞を書いているMATTONは都会的というより、人混みからは隔絶された場所で、1対1で静かに会話しているようなシチュエーションだと説明していたが、だからこの歌にはパーソナルで嘘のない言葉しかない。 折坂悠太「トーチ」 そもそもこの曲は折坂が「折坂悠太のツーと言えばカー2019」に参加したゲストアーティストの1人、butajiと共作した曲。 もう毎年だけど、去年の台風などの自然災害を題材にして書かれた曲だ。 住まいが破壊されるという具体的な落胆もある。 はぐれたどこかの子どもが話す言語がわからないという、壁を感じる戸惑いもある。 でもそんな悲惨な夜に笑っているお前、複雑な思いに囚われている自分。 でもおそらくこの2人は終わりのその先へ歩いていくのだろう、と想像する。 謡のような朴訥としたおよそエゴを感じない折坂の声はいつも通りだが、フォーキーで流れるようなこの曲では普段より素直な歌唱だ。 butajiは台風が過ぎ去ったある日、「これは次が来たんだな、人の力ではどうしようもない次があるんだな」と言ったと、折坂はこの春、リリースするにあたってコメントしている。 受け入れ難いことも、起こる時は起こる。 この先をどう生きるか、静かに考えさせてくれる曲だ。 くるり「HOW TO GO」 過去の楽曲を再解釈した『songline』収録の「その線は水平線」は「HOW TO GO」の曲構造に近しく、歌詞も柔らかいので、「~水平線」もいいかと思ったが、敢えてのこの途轍もなく荒凉とし、重量感たっぷりなこちらをお勧めしたい。 相当な力をかけないと進まないような重いギア感。 グランジを乾かして、言葉の意味通りのハードなロックにして、しかもスライドギターはどこかアメリカンロック調。 ものすごくゆっくり進む機関車みたいだ。 そして永遠に終わらないようなアウトロのリフレイン。 メッセージ云々より、演奏の集中力と具体的な音像が「HOW TO GO」=どのように行くべきか、答えのない中、それでもじりじり進む意思を体感として伝える。 些細な悲しさじゃなく、相当な胆力が必要な時、常に思い出す曲だ。 ちなみにアルバム『アンテナ』のバージョンはクリストファー・マグワイアがドラムを叩いているが、シングルでは岸田の打ち込み。 個人的にはシングルバージョンがより切実に聴こえて時々引っ張り出しては聴いている。 癒しの対極かもしれないが、前を向ける曲。 (プロフィール) 石角友香 フリーの音楽ライター。 情報誌の音楽担当を経てフリーへ。 フックがあれば洋邦、時代問わず聴きます、書きます。 最近、アジアのフェスにハマり中。 香港、タイ……今年も行けますように(願)。

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